5.12015
職場環境改善のために活用
・ストレスチェック結果を用いて、心の健康づくり計画の一部として職場環境を改善する
・5つのステップで効果的な職場環境の改善を行う
職場環境を改善するためには
職場環境の改善においては、事業場ごとに進め方を定めておく必要がある。
そのためには、事業者が衛生委員会等で手順を明確化し、その手順を事業場に周知しなければならない。
職場環境を改善するためのツールを利用しながら、事前に十分な準備を心がけて改善の方法を推進しよう。
職場環境改善の主体と進め方
事業者や(安全)衛生委員会が行う職場環境改善
事業者が自ら、あるいは(安全)衛生委員会においてストレスチェックの集団分析の結果をもとに労働者のメンタルヘルスに影響を与える職場環境等を評価し、対策を立案し実施する。
また、集団分析の結果をもとに管理監督者に教育研修を企画することも含まれ、産業保健スタッフ等は事業者や(安全)衛生委員会が行う職場環境等の評価に助言したり、計画の立案を支援する。
管理監督者が行う職場環境改善
管理監督者に対して担当部署のストレスチェックの集団分析の結果を示し、それぞれの職場で職場環境等を評価し、自主的に対策を立案し実施するように求める。
進捗管理や効果の評価は(安全)衛生委員会等が行うこととする。
産業保健スタッフ等は管理監督者に対する面談などを通じて、集団分析結果の見方や職場環境等の評価の仕方、対策の立案を支援する。
従業員参加型の職場環境改善
当該部署のストレスチェックの集団分析の結果をもとに、管理監督者が従業員と話し合いながら、職場環境等の評価と改善のための計画を検討する方法。
後述する従業員参加型の職場環境改善ワークショップなどを行い、従業員の意見を反映した改善計画を作成実施し、職場環境改善のなかでは、もっとも効果がある方法であるとされている。
産業保健スタッフ等は、職場環境改善ワークショップの企画、実施を支援し、計画の実施をフォローアップする。
ワークショップでは、従業員の間で活発な意見交換がなされ、有効な改善計画の提案がなされるようにファシリテーターの役目をつとめる場合もある。
効果的な職場環境のための5つのステップ
ステップ1. 職場環境等の改善のための体制作り
事業場ごとの状況を踏まえて、体制や進め方を選択する。
まずは事業者が方針を表明し、衛生委員会等で審議を行う。
目的・方針については、問題解決型の取り組みであることを明確にすることが重要だ。
また、管理監督者に対して方針や進め方を十分に説明し、管理監督者の主体的な関与を引き出すことも重要である。
ステップ2. 職場環境等の評価
ストレスチェックに職業性簡易調査表を用いた場合、部署やグループ別の仕事のストレス要因を集団分析することができる。
集団分析の結果を参考にしながらも、日常的な職場運営や職場巡視から得られた情報や、管理監督者や労働者からの聞き取りなども総合して職場環境等におけるストレス要因の把握を行うようにする。
ステップ3. 職場環境等の改善計画の立案
ストレスチェックの集団分析を参考にした職場環境等の評価結果に基づいて、職場環境等の改善を計画するが、その場合には以下のことが推奨されている。
① 事前に事業場内外の良好事例を収集する
② 改善策の検討や実施に労働者が参加できるように工夫する
③ 心身の負担に関連する職場環境や労働条件に幅広く目配りして改善策を検討する
実効性のある改善計画を立てるために、組織の体制や準備状況を考慮することも必要である。
また合わせて、改善のタイミングやスケジュールについて検討することも忘れてはならない。
立案については、職場の状況、時期、資源を考慮して計画を行うことに留意したい。
ステップ4. 対策の実施
計画が立案されたら、これを実施する。
継続的に改善が進むように、衛生委員会等を活用し計画が予定通り実行されているか、実施上の問題はおきていないかなどの進捗状況を定期的に確認する。
また、各部署から報告の提出を求めたり、期間を設定して実施状況や効果を報告してもらうことも効果的だ。
ステップ5. 効果評価と計画の見直し
一定期間後に対策の効果を評価し、計画の見直しを検討する。
この際の評価方法は2種類あり、プロセスの評価では計画が決めたとおりに実施されたかどうかを、活動記録や関係者からの聞き取り等によって評価する。
もう1つは、アウトカム評価で、目的とする結果の指標が改善したかどうかを評価の対象とする。
計画通りに実施できなかったり、目的とした効果を達成できなかった場合には、よりよい対策になるように計画を見直します。うまくいった対策については、好事例として事業場内に周知して活用する。
このように職場環境改善の取り組みをPDCAサイクルに組み込み、継続的に実施できようにする。
職場環境改善のためのツール
(ア) 職場環境改善のためのヒント集
職場環境改善の好事例を6領域30項目にまとめた食な改善ツールが厚生労働省より公開されている。
自分の事業場や部署と関連の大きい項目だけを抜き出したり、順番を変えたりして使いやすいものにしても構わないため、ヒント集を参考に自社の環境改善集を作ってみるのもいいだろう。
(イ) メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)
労働者の意見調査により職場環境改善の目標と計画を策定することを支援するための質問票で、職場の望ましい状態が45項目列記されている。
労働者に、それぞれの項目を改善目標とする必要性を「1.実現されており改善は不要」、「2.できれば改善が必要」、「3.ぜひ改善が必要」、あるいは「4.この職場とは関係がない」の4つの選択肢から選んでもらい、その結果から計算される要望率(「2.できれば改善が必要」、「3.ぜひ改善が 必要」の回答の合計割合)および実現率(「1.実現しており改善は不要」)の回答の割合)により、項目の優先ランキング一覧を作成。
これを参考に労働者の職場環境改善のニーズを確認する流れとなっている。
要望率と実現率の上位10項目をもとにして、各職場で討議しながら職場環境等の改善の計画を検討し、職場環境等の改善のプロセス評価にも使用することができる。
また、対策の前後で、MIRROR による調査を実施し、改善活動実施前から実施後への変化を確認することもできるため、MIRRORの再調査で、各項目の改善要望率(“改善の必要あり”と回答した者の割合)が減少したり、実現率(“実現しており改善不要”と回答した者の割合)が増加しているなら、改善が効果があったと考えられる。
なお、ヒント集やMIRRORは、ストレスチェックの調査票として使用するものではなく、ストレスチェックの集団分析をもとに職場環境改善を行う際のツールであることに注意が必要である。