5.12015
産業医による面接指導の実施
・産業医が対面で実施することが望ましい
・面接実施前には、労働時間やストレスチェック結果、業務内容、健診結果など必要な情報を事前に収集する
・面接指導では、産業医からの指導を行い、面接指導後には産業保健スタッフによるフォローを行う
産業医へ事前の情報提供が重要
産業医による面接指導を受けるということは、労働者本人にとって周囲の状況が望ましくない状態にあるということだ。
その状況を変えるためには、労働者自身の力だけでは足りず、周囲から力を借りることも難しい。
そのような場合は、産業医との面接が大きな役割を担ってくるのだが、そのためには現在の状況について情報を提供する必要がある。
しっかりと情報を提供することで指導内容も充実したものとなるだろう。
実施方法
面接指導を行う医師は、規則第52条の17の規定に基づいて、次に掲げる事項について確認を行う。
① 当該労働者の勤務の状況
職場における当該労働者の心理的な負担の原因及び職場における他の労働者による支援の状況を含む。
② 当該労働者の心理的な負担の状況
③ ②のほか、当該労働者の心身の状況
なお事業者は、当該労働者に適切な面接指導がなされるよう、あらかじめ面接指導を実施する医師に対して、当該労働者の労働環境、作業負荷の状況等に関する情報を提供するものとする。
産業医による必要確認事項
ストレスチェックの3項目(※)に加えて、以下に掲げる事項について産業医の確認が望ましい。
・ 当該労働者の勤務の状況
・ 心理的な負担の状況
・ その他心身の状況の確認
(※)
・ 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
・ 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
・ 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
上記3項目の確認については、当該労働者のストレスチェック結果を確認することで足りることである。
具体的な進め方
① 手段について
原則、医師が対面で実施することが望ましい。
ただし、ICTを活用することに合理的な理由がある場合など一定の条件を満たした場合、事業者の判断で ICT を活用した面接指導を実施することも可能と考えられる。
② 指導場所について
秘密が厳守されるよう配慮する必要あり。
事業場外で実施する場合は、業務に支障をきたさぬよう、事業場から遠くない場所の選定が望ましい。
閉鎖性のあまりにも高い場所はトラブルの誘因となる可能性がある為ため、推奨はできない。
③ 事前情報の収集について
実施に先立ち事業者や本人から必要な情報収集が必要。
・ 対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職等
・ ストレスチェックの結果(個人のストレスプロフィール等)
・ ストレスチェックを実施する直前1か月間の、労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、労働日数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)等
・ 定期健康診断やその他の健康診断の結果
・ ストレスチェックの実施時期が繁忙期又は比較的閑散期であったかどうかの情報
・ 職場巡視における職場環境の状況に関する情報
④ 面接による医師からの評価
疲労、不安、抑うつ等のストレスが、どの程度か、業務と関連するものかどうか、業務と関連するものであれば、業務の過重性や業務の心理的負担について評価を行う。
特に、抑うつ症状については、うつ病等の可能性を評価。
また、対象者の健康状況については、健康診断の結果も踏まえて評価し、総合的に判断を行う。
⑤ 本人への指導・助言
①~④の手順を踏んだ後に、産業医により労働者に対して具体的な指導や助言を行う。
面接指導による評価は、あくまでもセルフケアの指導・助言と専門医療機関への受診勧奨の要否を判定するにとどまり、うつ病等の診断を行うものではないことを再度認識する必要がある。
⑥ 産業保健スタッフによるフォローアップ
・ 専門医療機関の受診を開始した労働者については、診療環境が混乱しないよう、受診先に任せるのが望ましい。
・ 専門医療機関を受診するようになった場合、対象者の職場での状況等について主治医に情報を一方的に提供するのみならず、職場環境等について主治医と意見交換、情報交換を行って、連携して労働者を支援が必要。
また、支援に当たっては、必要に応じて人事労務管理者、管理監督者との情報交換・連携も必要。
ただし、これらの情報交換は本人の同意を得て行わなければならない。
・ 受診先から職場でのフォローを要請された場合には、情報交換を密にしながら、保健指導等を実施。
・ 受診勧奨を行ったにもかかわらず医療機関受診に至らなかった労働者であって、継続的な保健指導が必要な場合には、一応フォローアップしたうえで、改善がみられなければ、繰り返し受診を勧奨するのが望ましい。