1月の衛生委員会の議題例 ~ 過労死等防止対策推進法について ~
過労死等防止対策推進法は、主に過労死等の防止・救済という目的で
平成26年11月より施行されました。
過労死等防止対策推進法の中で、初めて「過労死等」の定義が明記されるよう
になりましたが、実際には、その発生要因や機序が明らかでない部分が多く
今回の法施行に伴い、より詳細な実態解明が期待されています。
企業における過労死等防止対策としては、まずは職場における実態把握を行い
それぞれの実情に応じた積極的な取り組みが求められています。
ぜひ対策推進の機会となるようご活用いただければと思います。
【DL】過労死等防止対策推進法について
▼来月のテーマは「花粉症について」です。
DTコラム~現場の声~
「産業医とか産業保健師って、利益にはならないし、
成果が目に見えづらいからコストをかける意味が見出せない」
営業としていろいろな企業に訪問すると、こんな話を聞く機会があります。
でも、本当にそうでしょうか?
もし社員が休職すると、労務に服することがなくとも傷病手当や医療費が
必要となる場合もありますし、休職せずとも、
メンタル不調に陥ってしまえば生産性は著しく低下することになります。
余剰人員がいれば、その労働力であがなうことも可能ですが、
多くの会社では、そういった人員は確保できていないかと思います。
そのため、急遽休職する社員が出た場合、もしくは最悪のケース、
急な退職が発生した場合は、新たな人員の確保が必要となります。
マイナビが2015年卒新卒採用にかかった費用の総額を
調査した結果によれば、平均で556万円、
中途採用では2012年9月から2013年8月に行った調査で、
人材紹介費用として561万円という多額のコストがかかっていると分かりました。
一方で、産業医を導入した場合は、
月1回2時間の訪問でおおよそ年間の費用が72万円程度、
交通費やイレギュラーな対応で追加の費用が掛かったとしても、
年間100万円に満たないコストとなります。
また、産業医・産業保健師は社員の休職や、
就労制限などの問題が発生しないために使えるいわゆる「ツール」であり、
予防措置、対策にも大きく貢献ができます。
このように比較して考えると、どちらにコストをかけたほうが
会社にとって利益があるか分かるのではないでしょうか。
しかし、厚生労働省が行った平成22年の労働衛生基本調査によると、
産業医選任義務がある事業場での産業医選任率は87%、衛生管理者の
選任率は86%となっています。
さらに、50人未満の事業場での設置が必要な衛生推進者に至っては43%に止まります。
ただ、いくら産業医がいても、会社が協力的ではなかったり、
実務が伴わない形態での契約では意味がありません。
そこで必要なのは、会社が主体となり社員の健康を守ることで、
生産性を維持・向上させるという考え方です。
健康経営という考え方をご存知でしょうか?
この考えは1992年にアメリカで提唱されたもので、
「企業が従業員の健康に配慮することによって、
経営面においても 大きな成果が期待できる」という考えのもと、
経営戦略的に健康について考えることです。
日本でも、健康経営に積極的に取り組んでいる企業を
経済産業省が「健康経営銘柄」として選定、公表する制度があるなど、
国をあげての活動まで行われている取組みです。
会社の健全な経営、利益の獲得には健康な社員が必要不可欠と言っても
過言ではありません。
健康面に配慮した経営を行えれば、医療費の節減だけでなく、社員の労働意欲も高まり、
生産性・創造性の向上も見込むことができ、会社の利益向上にも期待ができます。
また、企業イメージの向上等の効果が得られますし、
企業におけるリスクマネジメントとしても重要な要素となります。
「利益にならないものに投資をする」というネガティブな考えではなく、
「社員や会社の未来を守るために、健康に投資をする」という
ポジティブな考えに切り替えることで、
産業保健分野へのコスト意識も変わるのではないでしょうか。
12月からスタートした「ストレスチェック」の義務化について
現在、人事部門の多くの方々より「ストレスチェック」がストレスだという声
が挙がっています。
◇すでに実施している企業の声
実際に数年前からストレスチェックを実施されている企業に効果について
ヒアリングしたところ、高ストレス者の多くは、
【1】上司との人間関係が悪化している人
【2】給与・処遇面・長時間労働などで不満を抱えている人
【3】業務成績・人事評価が悪い人
が大勢を占め、
【4】本来の目的である潜在的なメンタル不調者
は極めて少数とのこと。
毎年ほぼ同じメンバーがストレス数値の上位(高ストレス者)を占めている
状況が続いているとのこと。
また、実際にメンタル不調で休職となった方のストレス数値を調査してみると、
多くは、病状や通院していることを隠し、意図的にストレス数値を、
標準か標準以下となるよう回答しているケースが大半であるとのことでした。
産業医の意見では、高ストレス者として判定された方の中に、通院や入院が
必要な人はほとんどいない(良いことですが。。。)一方で、
個人の判断で、安易に精神科クリニックを受診し、その結果、何年も病気に
苦しめられてしまう人たちが多数出るのではないかと心配する声が多いことも
事実です。
◇法令上の高ストレス者のうち産業医面談を希望する人の割合
国の指針のとおり、57項目からなる「職業性ストレス簡易調査票」を用い、
ストレス強度が国内で標準的な企業がストレスチェックを実施した場合、
高ストレス者と判定される人の割合は、受検者総数の※10%となります。
統計的にそうなる評点基準が、システムの中で設定されています。
また、高ストレス者の中で、休職などの就業判定を含む産業医面談を希望した
人の割合は、受検者総数の※0.4%です。
1000人の規模の企業の場合、約100人が高ストレス者と判定され、
そのうち4人が産業医面談を希望し、更に4人のうち数名の人が、
休業となったり、残業禁止となるというイメージを想定しておく必要があります。
もちろん、仕事上のストレスが国内平均よりも高い会社の場合は、
高ストレス者は受検者総数の10%を超えてしまいますし、
産業医面談を希望される方も0.4%を超えてしまう可能性もあります。
※ 中央労働災害防止協会の統計調査による公表値
◇ストレスチェックの問題点
1.高ストレス者対策
高ストレス者の多くは、すでに、自身の業務量をセーブしていたり、上司等に
残業を減らしてほしいと要求をしていたり、要求は無いものの、
勤務態度が悪いなど、会社側が認識している人が多く含まれます。
高ストレス者と判定された方には、産業医面談を受診するよう保健師等から
勧奨をすることが法令により義務となっています。
実際に産業医面談を希望される人は、極めて少なくなるはずですが、
面談希望者の大半は、メンタル不調者というより、会社への不満が
強い人となることを事前に意識しておくことが必要です。
なお、会社としては、高ストレス者であることを知ってしまった場合、
安全配慮義務が発生することになり、高ストレス者の要求を無視することは困難と
なってしまいます。
会社への不満が強い社員個人へのアプローチはもちろん大切なことなのですが、
高ストレス者を発生しやすい「部門・部課」ごとに職場環境の改善を図ってい
くことが、根本的なメンタル予防につながることを忘れてはいけません。
【弊社の方針(1)個人の結果を収集しないこと!】
ストレスチェックの結果については、受検者本人の同意がない限り、実施者(
医療資格者)は、会社側に提供してはいけないというルールが
定められています。
弊社では、個人情報保護の観点や集団分析の精度を上げる意味からも、
同意取得は行わない方針です。
会社はストレスチェックの個人の結果について、一切収集しないと初めから
宣言していただくことを推奨しています。
個人の結果を会社が知ってしまった後のリスクは大きいことから、会社の基本
方針として、個人の結果を会社は収集しない旨、事前に社内に表明することを
お勧めいたします。
【弊社の方針(2)資料の提供】
ストレスは、業務の効率を上げ、本人の成長を促進させるために必要なもので
あり、ストレスにあまりに過敏となる必要はないこと。またストレス耐性を
強くするためには、様々な困難を乗り越えていかなければならないことなどを
わかりやすく説明した資料を、受検者全員に進呈する予定です。
しかし、過度なストレスが、一定期間以上継続すると、メンタル疾患を始め、
様々な病気の原因となることも伝えていかなければなりません。
【弊社の方針(3)電話・メール相談】
高ストレス者と判定され、産業医面談を受診するかどうか、迷っている方々を
対象に、保健師・精神保健福祉士による電話・メール相談を結果配布後1週間受付
致します。心身の状況をヒアリングし、適切なアドバイスを行っていきます。
2.個人情報の漏洩リスク
今回、厚生労働省では、インターネットではなく、社内のイントラネット上で
活用するアプリをわざわざ開発し、無料配布をしています。
今時であれば、インターネットベースの方が開発コストも安く、便利であるの
に、何故、閉じられたイントラネット用のアプリを開発したのでしょうか。
ストレスチェックと同様、機微な情報を取扱う「病院の電子カルテ」は、院内
管理の原則があり、ほぼすべて院内のイントラネット環境下で稼働しています。
万一ASPなどインターネットを利用した電子カルテで情報漏洩が起きた場合、
厚労省のガイドラインでは、その責任は業者だけではなく、まず第一に管理責
任者である病院長自身が負わなければならないことになっています。この結果、
インターネット上にデータを上げてしまっている病院はほとんどなく、便利さ
や料金よりも、個人情報保護を優先している状況です。
国内の医療情報の取扱いに、インターネットの利用が少ない状況などから鑑み
て、イントラネット用のアプリを提供することになったのです。
【弊社の方針】
ストレスチェックの結果は、職場環境の良し悪しや、社員の心身の健康状態、
上司等の支援状況など、極めて機微な個人情報の固まりであり、インターネッ
トを利用するリスクは負えないものと判断しています。
国内の病院と同様、企業様においても厚生労働省が作成したアプリを活用の上、
お手数をお掛けしますが、イントラネット内での受検を推奨しています。
【1】弊社の社内において、インターネットとは遮断された環境で、ストレスチェ
ック専用のスタンドアローンのPCを用いて、集計や分析作業を実施します。
【2】情報漏洩を気にされる多くの企業より、今回は敢えて、マークシート方式を
採用したいという声があり、紙(アナログ)による検査を実施致します。
【3】全受検者への結果通知については、メールを利用せず、実施事務従事者様宛に、
受検結果を紙で印刷の上、一人づつ封筒に入れた状態で送付致します。
来月号では「ストレスチェック制度の大きなメリット=組織診断=」を掲載致します。
保健師からの健康アドバイス 冬季うつ病をご存知ですか
10月から12月頃にかけてうつ症状が現れ、
春先の3月頃になると回復する「冬季うつ病」というものが
あるのをご存知でしょうか。
寒い・・ 曇りが多い・・
冬は、そんな環境で他の季節に比べてもマイナス思考になりやすい
季節ではあるのですが、冬季うつ病は単に思考の問題に留まらず、
実質心身に影響が出てくることがあるのです。
朝起きるのが辛い・・だけでは病気ではありませんが、
他に下記のような症状がある場合は、「冬季うつ病」の
可能性があります。
- 睡眠時間が長いにも関わらず、日中眠い
- 食事が炭水化物や甘いものに偏り、体重が増える
- 無気力感、集中力の低下が現れる
- 自己否定的になる
冬季うつ病は、日照時間の短さによってホルモン分泌が乱れ、
体内時計が狂うことが原因です。
そのため、太陽の光を浴びることが効果的な予防と治療
とされています。
冬季うつ病に限らず、体内時計を規則正しく保つことは、
心身の健康の維持に有効です。
毎日の過ごし方から、明日の健康な心身を
守っていきたいものですね。