第080号 過労死ゼロを目指すために

3月の衛生委員会の議題例 過労死ゼロを目指すために

過労死等による労災補償は年々増加傾向にあります。
企業として、個人として、できることはなんでしょうか。

下記URLよりダウンロードできます。ぜひ積極的にご活用ください。

『過労死ゼロを目指すために』

DTコラム ~ 現場の声 ~

2月も下旬になりましたが、寒い日が続いていますね。
冬は気分の落ち込みを感じたことがありませんか?
なんだか怠い、身体が重い、気持ちが暗い……など。
こういった体験をしたことがある方もいると思います。

ちなみにわたしは毎年、寒い場所にいるとしっかり寝た日も、眠くてあくびが止まらないという奇妙な現象が起きます。
みなさんの周りに冬になると不調になる方などはいらっしゃいませんか?
仕事の効率が下がったり、ミスを繰り返したり、なんだか元気がない方…。
冬は行動面でも不調が目立つ季節だと言われています。

今日は冬の気候がもたらす不調についてお話したいと思います。

冬季うつ病

さて、みなさん、〝Seasonal Affective Disorder = SAD”という言葉を聞いたことがありますか?

日本語では「季節性感情障害」といわれる病気です。
精神科医のローゼンタールらによって解明された「冬季うつ病(または季節性うつ病)」とも呼ばれる精神疾患をいいます。

一般的なうつ病は精神的なストレスが原因になることが多いのですが、このSADは主に季節・気候の変化による、日照時間の減少が、ホルモンの分泌バランスの乱れを引き起こることによって発症するとされています。

すべての人に当てはまるものではありませんが、特徴的な症状としては、以下が挙げられます。

① だるさや無気力感、集中力の低下
② 過眠(寝ても寝ても眠い、10時間以上寝てしまう)
③ 過食(特に菓子類や炭水化物を多く摂取してしまう)

発症には冬ならではの理由が

冬季うつ病には「目に入る光の量」が大きく関係しています。
人は光に当たると、脳内で満足感や精神安定をもたらすセロトニンという物質の分泌が行われます。
冬になり、日照時間が短くなると、このセロトニンの分泌量は減少してしまうため、だるさや無気力感、集中力の低下など、気分の不調が引き起こされてしまいます。

また、セロトニンは甘いものを食べると分泌が促進されるため、足りていないセロトニンを補おうと脳が甘いものを欲し、その結果、菓子類や炭水化物の過食を招くと考えられています。

過眠については、睡眠を促すメラトニンが関係してきます。
人は朝起きて、光を受けた14~16時間後に眠気がやってくるとう体内時計に則って生活していますが、受ける光の量が少ないとメラトニンの分泌が増えてしまい、これが「過眠」につながります。

日照時間が関係する病気のため、北欧や北米などの寒い地域では発症数も多く広く知られていますが、日本ではまだまだ知名度は低い状況です。

最初に私が冬場感じているといった「眠さ」も恐らくSADが関係していると思われます。
おそらく身体は日照時間の減少の影響を受け、メラトニンの過剰分泌が起きているのかもしれません。

原因がわかれば対策ができる

原因不明のだるさや過眠過食に陥ると、怖いですよね。
でも冬は日照時間が減る、日照時間が減ると体内ではこんな変化が起きている、そのせいでさまざまな症状が出てくる、という知識がつくと対策も講じることができるでしょう。

出勤前に少し散歩を取り入れる、お昼休みは日の当たる場所に出てみる、家では冬場だけベッドを窓際に置いてみるなど、生活のなかで工夫してみませんか。
強烈な食欲にかられた時には、「ああセロトニン不足なんだ」と理解して、トリプトファンを含んだものを選んだり、セロトニンの分泌を促す運動やハグコミュニケーションを行ったり、できることはたくさんあります。

また、もし職場で冬季うつ病のような症状が出ている人がいれば、ぜひ職場全体で知識を共有して、照度を上げる、窓際へ席替えをするなど職場で取り組める対策を考えていきましょう。

毎年だるいな~で終わらせず、今年の冬はぜひ自発的に冬季うつ病に立ち向かっていきましょう。

※睡眠と光の関係は、こちらの記事も参考にしてください。

保健師からの健康アドバイス ~ お役立ちサイトや資料の紹介 ~

働き方改革と休み方改革、どちらも重要です

2019年4月に働き方改革法が施行されますが、法制度にかかわらず、自主的に「働き方改革」に取り組んでいる企業も多いでしょう。

休み方は働き方と同じくらい重要

このときに忘れてはいけない視点は「休み方改革」です。
ただ働くだけではなくきちんと休むことができなければ、良いパフォーマンスを発揮することができず、生産性が向上しないからです。

みなさんの会社は労働者がきちんと休むことができる環境でしょうか。
またみなさん自身は、きちんと休むことができているでしょうか。

働き方・休み方改善ポータルサイト

厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では長時間労働や年次有給休暇に関する現在の状況を簡単な設問に答えるだけで自己診断できるツールが、企業向けと個人向けの2種類紹介されています。
企業向け診断は人事労務担当者が対象で、休み方に関する会社の実態や具体的な課題を抽出し、グラフで視覚的に把握することができるとともに、改善に向けての対策のヒントを得ることができます。
個人向け診断は全社員が対象で、自身の仕事の進め方や仕事に関する考え方の振り返りや休み方の再確認をすることができます。

同サイトではほかにも、抽出された課題別の対策法や、休暇制度・支援法、他社の取り組み事例など、休み方に関するさまざまな情報が掲載されています。
無料で利用可能ですので、ぜひ一度ご利用されてみてはいかがでしょうか。
また休み方改革については産業保健新聞でもご紹介しておりますので、こちらも併せてご参考にしていただければと思います。

<参考>
・ 働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)

こちらもご一読ください

休み方改革を取り入れましょう!(産業保健新聞)
休み方改革とは? 〜働き方改革との違い〜(産業保健新聞)
「やりたい!」を叶える長期休暇制度(産業保健新聞)

 

忙しい時期こそ、自分自身や周囲の様子に目を向けよう

3月から4月にかけては人事異動などもあり、一般的に環境の変化の多い時期です。
それに加え、この時期は業務的に繁忙期の会社も多く、残業も一時的に増えるかと思います。

繁忙期こそ要注意

忙しい時期は、メンタルヘルスの不調が出やすい時期ともいえます。
普段から自身や部下、同僚の残業時間や体調を気に掛けるようにしましょう。

自分のストレス状態をチェック

まずは、自分自身の状態を確認してみましょう。
以下にあてはまることはありませんか?

  •  ひどく疲れた
  •  落ち着かない
  •  へとへとだ
  •  憂鬱だ
  •  だるい
  •  何をするのも面倒だ
  •  気が張り詰めている
  •  気分が晴れない
  •  不安だ

疲れがたまると、身体面、心理面、行動面に反応が表れます。
まずは自分自身のストレス状態を客観的に振り返ることを習慣化してみましょう。

部下や周囲の人は大丈夫?

また、部下や周囲の人に以下の様子が見られたら、要注意です!

  •  遅刻、早退、欠勤が増えた(無断欠勤がある)
  •  仕事の効率が悪くなる
  •  報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいは多弁になる)
  •  服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする
  •  表情に活気がなく、動作にも元気がない

これら、いつもとは違う様子に気がついたら、積極的に声をかけ、話を聞くようにしてみましょう。

<参考>
・ こころの耳(厚生労働省)
・ 「職場のメンタルヘルス関連リーフレット集(PDF)」(産業医学振興財団委託研究)

こちらもご一読ください

季節の変わり目に自律訓練法!(産業保健新聞)
部下の話、きちんと聴けていますか?(産業保健新聞)
やる気が出ない時を乗り越えるちょっとしたコツ(産業保健新聞)


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ドクタートラストの実務経験豊かな産業保健師、精神保健福祉士(PSW)が、これまで数多くの企業の衛生委員会運営に携わってきた経験を活かし、衛生委員会の立上げ・運営や、企業の衛生管理全般に関して支援するサービスです。


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