第099号 2019年度ストレスチェックデータからわかること~その2~

10月の衛生委員会の議題例  2019年度ストレスチェックデータからわかること~その2~

ドクタートラストが受託したストレスチェックの集団分析結果を用いて、高ストレス者の特徴などについて分析しました。
下記URLよりダウンロードできます。ぜひ積極的にご活用ください。

「2019年度ストレスチェックデータからわかること~その2~」

DTコラム ~ 現場の声 ~

産業保健活動をチームで効果的に

メンタルヘルス対策や離職対策など、産業保健活動で取り組むべき課題は多く存在します。
しかし、企業で産業保健を行う中で以下のような状態になっていませんか。

・ 従業員数50名を超えため、産業医をかたちだけ選任している
・ 産業保健チームでの一人ひとりの認識や目標が定まっていない
・ 具体的な取り組み方法がわからず、課題解決につながっていない

産業保健チームの構築を行い、チームメンバー一人ひとりの専門性が発揮されるようになると、結果として職場の問題解決につながります。
産業保健チームが企業にとってメリットとなるよう見直してみましょう。

産業保健チームの役割分担と連携

事業場での産業保健活動では、質と量、両面での充実が求められます。
嘱託産業医の多くは企業での活動時間が限られていることから、産業医やそれぞれの専門職が役割を明確にすることが必要です。
またそれぞれが得た情報を定期的に行われる衛星委員会などの場を利用してチームで共有し連携をとることで、さらに問題点に気づき、対策に取り組むことができます。
役割分担と連携を行うことで、産業医も適切なリーダーシップを発揮することができ、よりチームとして成果を上げることにつながります。
役割分担と連携を十分に行うことで産業保健活動を企業にとってのメリットとすることができます。

ある職場の課題に対してのチームの取り組み例

ここでは具体的な例を見ていきましょう。

<課題>
従業員の平均年齢が高く、体力仕事であることから体調不良を訴える従業員が増えている。
また若い世代の採用を考えているが一向に応募が来ない。
<状況>
健康診断の結果で有所見者が多数確認されている。
しかし勤務中に体を動かす機会もないうえ、事業所の立地都合で従業員のほとんどが車で通勤していたりと、運動不足や生活習慣が問題となっている。

この職場では以下のようにチーム体制で取り組んでいきました。

・ 産業医は、体を動かすことを習慣化させるために朝礼時のラジオ体操を実施や、通勤方法についても自転車の活用を推奨。また業務中にぼんやりしてミスが目立つ従業員の情報を共有し大きな事故につながる前に面談を行い、従業員と一緒に原因・対策を考えた。
・ 保健師は、健康相談の窓口を設置し、気軽に相談をしてもらえる環境を用意。衛生委員会の場で情報を共有し、必要であれば産業保健チームの他専門職や産業医につなげた。
・ 衛生管理者は産業医、保健師と健康相談や日々の運動の重要性を話し合い、各課長や従業員に周知を行った。それでも伝わらない場合には産業医や保健師に相談をし、直接周知を行ってもらった。

実施後 日々の運動を意識的に取り入れた従業員は、よく睡眠をとれるようになり、業務中の集中力が増し、ミスが減ったほか、生産性も上がり、業績もアップにもつながりました。
さらに従業員の健康づくりに取り組む会社として業界誌や業界新聞にも取り上げられ、若い世代の求人応募数が増加しました。

産業保健活動に今後求められていること

新型コロナウイルス感染症により、担当業務に影響があった従業員も少なくありません。
その中でもマイナスに働いていると感じている従業員が過半数を超え、これまでと違った各企業の課題が既に発生しているかと思います。
より産業保健活動を円滑に取り組んでいる企業の従業員は、「うちの会社は我々従業員のことを考えてくれている」、「職場でいい仕事をしていきたい」と仕事にメリハリを生むことができます。
従業員の健康や、定着率につながるよう各企業独自の産業保健活動チームの運営法を見つけていきましょう。

保健師からの健康アドバイス ~ お役立ちサイトや資料の紹介 ~

新型コロナ陽性者との接触可能性がわかる「COCOA」とは?

新型コロナウイルスの感染が広がる中、注目を集めているアプリがあることをご存知でしょうか。
それは厚生労働省が開発した「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」です。
職場内での感染拡大を防ぐためにも働く皆さんにぜひ活用していただきたいCOCOAをわかりやすくご紹介します。

COCOAとは?

COCOAの使い方

COCOAとは、「COVID-19 Contact Confirming Application」の頭文字から名付けられたスマートフォン用の新型コロナウイルス接触確認アプリです。
厚生労働省が新型コロナウイルス感染症対策テックチームと連携して開発しました。
COCOAの目的は、その名の通り一人ひとりが新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性を把握し、早期に検査の受診や保健所のサポートを受けることで、市中での感染拡大を防止することです。
非常に手軽に使うことができ、氏名や電話番号、メールアドレスなどの個人情報は一切入力することなく、ただスマートフォンにアプリをインストールし、ブルートゥース機能を有効にするだけで利用が開始できます。
アプリを常時起動しておく必要はありません。

COCOAのしくみ

COCOAがどのように陽性者や接触者の把握をおこなうかについて簡単にご説明します。
まず、COCOAではGPSなどの位置情報は一切使われず、記録されることもありません。
位置情報ではなくブルートゥースを利用し、過去14日間におよそ1メートル以内、15分以上の接触があった人と、お互いに暗号化されたランダムな符号を交換して、スマートフォン上に記録を残します。
このときに交換するのはランダムな符号のみで、氏名、電話番号、メールアドレス、位置情報など個人が特定されるような情報は一切記録されませんので、安心して利用できますよ。
利用者が陽性と診断されたときは、保健所から処理番号が発行され、その処理番号をアプリに入力することで陽性者として登録がおこなわれます。
陽性者として登録がおこなわれた人と過去14日間に接触していれば(ランダムな符号を交換していれば)「接触があった」という通知がアプリ上で表示されます。
このようにして陽性者との接触の可能性を知ることができるのです。
もし陽性者との接触がわかったときには、アプリ上で症状や身近な人の状況について選択すると、帰国者・接触者外来などの連絡先が表示され、検査の受診などの案内を受けられます。
ただ、国民全員がCOCOAを利用しているわけではありませんし、陽性と診断されてもCOCOAには登録しない方もいらっしゃいます(登録は義務づけられていません)。
アプリ上で接触の可能性がなかったとしても実際には接触している可能性があることをふまえて、油断しないようにしましょう。

そもそもなぜ接触確認をする必要があるの?

なぜわざわざアプリを使って接触確認をする必要性があるのでしょうか。
それは、新型コロナウイルスがすでに感染している人と一定時間、近い距離で過ごしていること(接触していること)によって、感染しやすいと明らかになっているためです。
陽性者と接触したことを早めに把握できれば、早めに検査を受けて必要に応じて隔離療養を開始することができ、自分の命を守るだけでなく周囲の人へ感染を拡大させることを最小限にとどめることができます。
家庭や職場の中で陽性者が出た場合には、自分が接触者である可能性を把握できますが、たとえば利用した飲食店や商業施設などで見ず知らずの陽性者と接触していたときには、通常それを把握することができませんよね。
結果、もし感染していても検査や治療が遅れてしまい、症状があっても「ただの風邪」とみなして出歩いてしまえば、感染を拡大させてしまいます。
見ず知らずの人であっても陽性者と接触したことを早めに把握するのは、感染拡大防止の観点からも非常に重要なことなのです。
プライバシーを守りながら、陽性者との接触の有無という必要な情報のみを把握できるCOCOAは非常に画期的であるといえるでしょう。

職場での活用方法

職場内感染を起こさないようにするためにも、COCOAの活用が可能です。
どのように活用すればよいかを、一例ですがご紹介します。
まずは会社がすべての従業員に対し、COCOAの概要や目的を説明したうえで、インストールを促します。
次に、COCOAをインストールした従業員に毎日決まった時間(可能であれば出勤前や出勤直後)に陽性者との接触の有無を確認してもらいます。
万が一接触があった場合には、人事や衛生管理者に申し出てもらい、症状がなくても念のため仕事を休むか、自宅で仕事をするように促します。
またCOCOAに表示された手順に沿って症状などを選択すると検査の受診について案内を受けられますので、案内に従うことをお勧めしましょう。
これをおこなうだけでも、感染している可能性のある従業員が職場内で感染拡大させてしまうことを最小限にとどめられます。

COCOAを職場で活用するうえでの注意点

ただし、COCOAを職場で運用するにあたっては注意点もあります。
まず、事前に陽性者との接触があった場合の対応は、会社としてよく検討して定めておく必要があります。
接触があったときに会社が強制力を持って自宅待機を命じるのであれば、そのときに使える特別有休制度や在宅勤務制度を定め、従業員に周知しておいたほうがよいでしょう。
また、本人のプライバシーの問題もあります。
いたずらに「〇〇さんが陽性者との接触がありました」と全従業員に公表することは本人のプライバシーを害してしまうのみならず、他の従業員の不安を煽ることになります。
当然ですが、接触したからといって必ず感染するわけではありません。
デスク周辺や共用物品の消毒や、従業員への手洗い、マスク着用の励行は継続する必要がありますが、基本的には落ち着いて本人の検査結果を待って、感染していた場合には、職場内での接触者の把握など、陽性者発生時の対応をおこなうようにしましょう。
もちろん、職場内に陽性者が発生時の対応をまだ定めていないのであれば、早めに定めておく必要があります。
最後に、陽性者や接触者を責めるような言動や、差別的な言動はあってはなりません。
そのような風土があると、従業員が感染したときや、陽性者との接触があった際に、会社に申し出ずに隠してしまう危険性もあります。
そのため人事や衛生管理者だけでなく、従業員全員に意識してもらえるように教育する必要があります。
「陽性者=無自覚に遊び歩いていた人、感染対策をきちんとしなかった人」という認識は間違いです。
どんなに注意して感染対策をおこなっていても、通勤路や最低限の日用品の買い物などで感染してしまう可能性は誰にでもあります。
「陽性者や接触者を責める行為、差別する行為は会社として絶対に許さない」というメッセージを強く発信しておくことが重要です。
従業員の中にはCOCOAの存在をまだ知らないという方もいらっしゃるかもしれません。
多くの人に使ってもらうことで、職場内での感染拡大防止にも役立てられるアプリですので、ぜひ社内で周知してみてくださいね。

<参照>
厚生労働省「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) COVID-19 Contact-Confirming Application」

※記載内容は、本稿執筆時点にもとづく情報です。

以下の記事も合わせてご参照ください

コロナ禍が加速させる新しい雇用形態 ~「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」~(産業保健新聞)
ビジネス渡航者向けコロナウイルスの検査証明の体制「TeCOT」とは?(産業保健新聞)
コロナ禍での健康診断はいつ受診すべき?(産業保健新聞)


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ドクタートラストの実務経験豊かな産業保健師、精神保健福祉士(PSW)が、これまで数多くの企業の衛生委員会運営に携わってきた経験を活かし、衛生委員会の立上げ・運営や、企業の衛生管理全般に関して支援するサービスです。


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